六つ星写真館 上信:不納山・水晶山:
2004年4月10日 :
文章 会員全盲Y ・ 撮影 会員晴眼T


コース
4月10日  出発10:45-休憩11:25-休憩11:50-昼<12:05-12:30>-不納山<13:35-13:50>-休憩14:40-分岐14:55-水晶山15:05-15:15-分岐15:25-下山15:50
 深谷駅を8時20分の新特急が、渋川に着いたのは9時02分。ここで、東京方面から来た 山の仲間の大型乗用車に、八高線からのMoさんとともに乗せてもらい、春の陽が降りそそ ぐ 上州路を、四万温泉に向かう。今回は、二日間に渡ってSさんが実施する、六つ星の 個人山行への参加である。
 梅と桜と桃が、一度に咲く田舎の風景を楽しみながら、車内で話しに花を咲かせている うちに、車は山里に入った。やがて、四万川の清流が左手に見えてくると、温泉街がある 。今夜の宿、国民宿舎「ゆずりは荘」は、旅館街の奥。宿舎の前でも、電車とバスを乗り 継いで来た3人を乗せ、総勢12人になった車は、さらに数百メートル四万川を遡って、稲 (イナツツミ)神社近くの車道脇の広場に止まる。10時15分だった。
 ここで、今回の参加者全員が声を出し合い、一日目の目標、不納山に登る準備をする。 空は晴れて、川を渡る風は爽やか。天気予報では、今日の前橋辺りは25度近くになるとい う。

☆つづら折れの急登を越えて、
 実際に山に登るのは、全盲者4人、弱視者2人、晴眼者4人の、10人である。あとの2 人、Tさんのお母さんと、古い六つ星会員のご婦人は、別行動をとることになっている。 視障者をサポートする人が少ないが、弱視者が列の中を歩き、安全を確保する。登山道に 入ってからのリーダーは、山のベテラン、Mさんである。私のサポーターは、T女子。別 行動の2人も、途中までは一緒に行く。
 Tさんのお母さんを先頭に、神社に向かって歩きだしたのは、10時45分だった。鳥居を くぐり、社の裏手に回ると、枯れ葉の積もった登山道が、山腹に向かって延びている。新 芽が息吹く木々の梢からは、小鳥たちの声が聞こえる。
 道はまもなくつづら折れになって、いきなり勾配が増した。次第に話声のトーンが落ち 、足下の枯葉の音が高くなる。カサコソの音がしなくなると、後ろからリーダーの声。  「ゆっくりでいいから、止まらないで。」
Tさんは、前を行くお母さんと、途中から先頭に出たご婦人を、小声で励ましながら歩い ている。歩きだしてすぐの、急登はきつい。ようやくリーダーから、休憩の合図がでた。 年輩のお二人は、ここでみんなと別れる。
樹幹にたたずむカモシカ。じっとこちらを見ているようだ、、、 足下は一転してなだらかな尾根の道。左眼下に、四万川ダムを見ながら進むと、 水晶山への分岐。短いつづら折れを越えると、次は左右が開けた稜線。左手には、明日登 る稲包山が、真っ白に雪化粧して、きれいな三角錐の峰を見せている。  その先の斜面の上は、少し平坦な林。ここを越えて、次の斜面に向かおうとした とき、先頭のTさんが、急に足を止めた。 「カモシカ。」
右手前方の藪にいる。一行が見つめても、驚く様子も見せない。まだ若いようだと 、誰かが話している。
 山の住人に別れて斜面を登ると、明るく間伐された杉林の中の、広い場所に入ってきた 。時計は12時05分になっている。ここでリーダーから、昼食休憩の合図がある。

☆6つのピークを越えて
 痩せたいといいながら、人のおにぎりまで食べてしまうSさん。食欲がない筈な のに、なぜかお腹には入るHさん。この山行の計画者、S男子と、今回の山行では最年少 のH女子の、会話を聞いているとおもしろい。
 ワイワイ ガヤガヤとる昼食は楽しいが、まだ目標への途上。宴席をたたんで再 び歩きだしたのは、12時30分だった。  これからの登りが、今日の最大の難関だという。10人は急登にさしかかった。日 陰に残雪を見つけて、Tさんが私のストックに触れさせる。さらに登ったところには、雪 の上にウサギだろうか、小動物の足跡もある。この辺りからは、杉がまばらになって、岳 樺や落葉松が多く見られるようになった。熊笹も多くなる。傾斜は緩み、また傾斜。  斜面を登りきると、最初のピーク(1221m)に出た。12時57分だった。稲包山、 高田山、谷川などの峰々が、春の日射しを浴びて姿を見せている。ここが不納山頂きかと 思うと、リーダーのMさんが言う。
木の幹に赤ペンキで書かれた「不納山頂」の文字。少し離れて道標があった。  「このピークが1つ目のピーク。こんなピークが幾つか合って、不納山頂は6つ 目。」誰からとなくため息が出るが、それでもみんなの足は笹を分け、雪を踏みだしてい た。 「ここで3つ目。」 「ここが6つ。」 「おまけがあるみたい。」  数が分からなくなった足は、またピークを踏んでいた。
すると、先頭のTさんが…不納山頂…と書かれた木を見つけた。 その先には三角点もある。Tさんが私の手を標石 に触れさせているうちに、仲間たちも次々にやってきた。不納山頂(1291m)への到着、 13時32分。 広い山頂は、熊笹や、落葉松などの立木に囲まれているが、まだ冬枯れの木々の 向こうは、上信越の山々が展望できる。 
「あれが浅間。」 「これが谷川。」 明日登る稲包山も、木立の隙間に、姿を覗かせている。薄く漂う春霞に乗って流れ ていく笛の音。Mさんは、オカリナを吹きだしていた。

☆水晶山
 山頂での景色を楽しみ、枯草の上に腰を下ろしたり、寝ころんだりして休んだ一行は、 13時48分に、来た道を戻って山を降りはじめた。
 私はピークを数えながら歩く。大きなピークの間に、小さなピークがあるのか、数は7 か、8になってしまう。翌日稲包山の方から見て分ったが、やはり6つのピークの 他に、小さなピークもある。  滑らないように注意して、小動物の足跡がある 急斜面を下だり、カモシカのいたとこ ろも過ぎる。水晶山への分岐近くまで来て、休憩していると、Mさんが、ここから水晶山 へはすぐだと言う。みんなはそこにも行くことにした。
水晶山の水晶? 狭いピーク?に結構ある。  10分ほど休んで、水晶山へ出発。山頂は、分岐から10分のところにあった。山頂とはい っても、山の突端にある大岩といった感で、岩には20段ほどの鉄梯子がかかってい る。梯子の下にザックを置いてよじ登ると、岩の上には祠があり、大人が10名も上がれば 、満員である。水晶山山頂(900m)への到着、15時05分。
 みんなが腰を下ろしている岩が、点々と光る。昔は、この辺りでも水晶を取っていたと 、誰かが話していたが、この岩も水晶を含んだ岩なのか。
 15時15分に、水晶山を後にすると、そこからは稲裏神社をめざして一気に下る。 枯葉のつもったつづら折れの道を、急ぎ足で降りると、今度は、神社の裏から左に折れて 藪を抜け、車を置いた場所に帰る。15時50分だった。

 その夜は、国民宿舎「ゆずりは荘」で温泉に浸かり、おいしい酒で団欒しながら、翌日 の山行の鋭気を養う。