六つ星写真館 
八ヶ岳:麦草峠(2,127m)-茶臼山(2,384m):
2006年5月21日 :
文章 会員全盲Y ・ 撮影 会員晴眼T


コース
5月21日  麦草峠駐車場10.45 - 大石峠11.15 - 中小場(昼食)11.40・12.05 - 茶臼山 頂12.50・12.57 - 茶臼展望台13.03・13.13 - 茶臼山頂13.17 - 東屋14.22・ 14.40 ー 出逢ノ辻15.15 ー 国道15.25・15.35 ー 麦草峠駐車場16.25
 ☆麦草峠
 朝7時に深谷を発った車は、佐久のインターを降り、旧八千穂村から国道299号 線(メルヘン街道)に入る。雨風が荒れた昨日とは打って変わって、若葉の上に広がる空 は真っ青だ。
 六つ星の仲間と出会うことになっている麦草峠まで、私を送ってくれるのは、近 所で生活サポートの仕事をしているMaさん夫妻。
 山肌に残雪が目立つようになって、白駒池への入口を過ぎると、目の前に峠が迫 ってきた。赤い屋根のヒュッテが建つ 麦草峠(標高2127m)への到着は、9時32分だった。
 ヒュッテの西側にある駐車場に車を止め、外に出るとさわやかな空気が頬にしみる。
 「明るい峠。」
 「山の春はこれからなんですね。」
 今年は4月・5月の気温が低かったせいか、雪解けが遅く、峠の草原は今ようや く新芽が息吹はじめている。そばの藪で鳴くウグイスの声もまだ何となくたよりない。
 駐車場で待つこと1時間。
 新宿を7時に出た仲間たちのバスが、茅野駅でも1人拾って峠に着いた。これま で静かだった空間が、急に賑やかになった。
 私を見つけて近寄ってきてくれたリーダー・Oさんによると、今回の仲間は全部 で21名だという。Maさんと帰りの時間を打ち合わせ、仲間たちの中に入っていくと、私は 3月に縞枯や北横を歩いたTaさんやGoさん、4月に今熊山を歩いたAさんたちと同じ班に なっていた。

☆大石峠から中小場
 一行が登山道に向かったのは10時45分だった。
 国道を渡ると右手に茶水池を見ながら、シラビソやコメツガの林に入っていく。 足下には木道が出てくる。
雪の上を歩いたり、木道を歩いたり、、忙しい  しばらくすすむと、全盲の私をリードして前を行くGoさんと、後ろからきてくれ るAさんの声。
 「雪の平均台。」
 「幅20センチ。」
林の中にはまだかなり雪が残っていた。所々で線状に踏み固まった雪の細尾根を歩 いては、木道に戻る。
雨池への分岐。雪融けの水でぬかるんでいる  やがて、雨池やオトギリ平への分岐がある大石峠(標高2160m)に着くと、木道 は終わって、足下はゴロゴロとした石の道になる。
 「梢の向こうに茶臼山。」
道の勾配が増して、周りの林が少しずつ開けると、木々の上に突き出した小さな岩 山の頭に出た。中小場(標高2232m)に着いたのは、11時40分だった。
中小場。南八ヶ岳やこれから目指す、茶臼山や縞枯山、眼下には樹林帯が裾をひいている  めざす茶臼山は目と鼻の先にある。後ろには丸山や中山・東西天狗。そして左手 、霞の向こうにはアルプスの山々が広がる。眼下には麦草ヒュッテの赤い屋根も見える。
 「ここでお昼にします。」
リーダー・Oさんの合図で、21人は思い思いに岩に腰を下ろした。私も、日溜まりで弁当を開く。

☆茶臼山
 再びザックを背にして、中小場を後にしたのは12時05分だった。
 今度はAさんが先を歩いて、Goさんが後につく。岩の小山を反対側に降りると、 また林の中に入る。こちらにも雪が残っている。
 茶臼の山腹をだいぶ登った辺りで、誰かが言う。
 「山肌の木が、ずいぶん枯れている。」 
これが、この辺りの山の南西部によく見られる縞枯現象なのかどうか、私には分からない。
 足下の雪が消えて、急に道の勾配がきつくなると、平なところに出た。茶臼山頂(標高 2384m)への到着は、12時50分だった。
 茶臼の山頂は木々に覆われていて、見晴らしはほとんどない。
 「この先の展望台まで行きます。疲れた人はここで待っていてもいいです。 リーダーのそんなすすめには、誰も反応しない。 展望台は、西側の尾根をたどると数分のところにあった。
北横岳の向こうに顔をのぞかせているのは蓼科山  周りは大きく開け、目の前には縞枯れで有名な縞枯山。その左に北横岳。そして 蓼科山。さらにその左から八の南端にかけては、その奥にまだ雪を乗せた北アルプス・中 央アルプス・南アルプスの山々が、薄霞をまとって連なっている。その左が、阿弥陀をは じめ南八の山々‥‥。Taさんが私のそばに来て、パノラマのように広がる眺望を説明してくれる。
権現から阿弥陀・赤岳・硫黄に天狗・・・ 南八ヶ岳の山々が臨まれる  ほかの人たちも、口々に声を出している。
 「霞の向こうに乗鞍が‥‥。」
 「あれが御岳。」
 「そして仙丈、甲斐駒。」
 「あの高いのが北岳でしょ。」
 日射しは峰々に降り注いでいるのに5月の山の空気はまだ肌寒い。下山の合図に ザックを背負うと、今回の写真係・Tさんの声。八ヶ岳をバックにみんなで記念写真を撮 る。
南八ヶ岳を背景、、まことに気持ちのよい気分! 眼下には出発してきた麦草峠も見える  茶臼の展望所を後にしたのは13時13分だった。

☆五辻・東屋
 茶臼からの下りは、Taさんが私の先を歩き、GoさんとAさんが後につく。
いよいよ下山。融けかけの雪道を慎重に下る  山頂に戻って、雪が残る林の道を縞枯山との鞍部に降りると、分岐を左にとって 高度を下げる。山を下るにしたがって、周りの雪がシャーベットのように解けだしている。  「セリバオーレン。」
Goさんが、雪の消えた道端に、今日初めての花を見つけた。Tさんが駆け寄って、 カメラを向ける。
 やがて周りが開けて、ピラタスロープウェイ山頂駅への分岐がある五辻に出た。 目の前には気持ちのいい笹原が広がっている。
 ここから先も緩やかに下りが続く。
 足下に小川が現れ、雪解け水を集めた流れが、軽やかな音をたてて私たちを追い 越していく。
 「きゃー。」
誰かが雪のシャーベットに腰まで入ったよう‥‥。
 流れを左に右に渡ると、また周りが開けて、五辻休憩所の東屋がある広い場所に 出た。14時22分だった。
 「休憩します。」
東屋の前には小川が流れ、周りには苔むした岩や笹が広がっている。日溜まりの岩 に腰を下ろしていると、Taさんが流れのほとりに導いていってくれた。水に手を浸すと、 痛いほど冷たい。
のんびりとした登山道には雪どけの水を集めたせせらぎが流れる
☆出逢ノ辻を経て
 14時40分に東屋を発つ。この辺りから、道脇にはほとんど雪がなくなる。少し下 ったところに、きれいな水をたたえた湿原が出てきた。
 「水芭蕉でも咲いていそう。」
 「こんなところに、湿原があったんだろうか?」
八ヶ岳に詳しいOさんに尋ねると、目の前に広がるみなもは、雪解けの時期にだけ できる池だという。
 途中で国道299号線へ迂回する道が出てくるが、ここではそちらに向かわず、オ トギリ平への分岐がある出逢ノ辻まできて国道に向かう。299号線に出たのは、15時25分 だった。
ヒメイチゲ 国道脇の陽だまりに咲いていた  「ヒメイチゲ。」
道路脇で休憩していると、Goさんが今度はヒメイチゲを見つけた。
 しばらく休んだ後、麦草峠に向かって国道を少し登り、反対側の山道に入る。こ こからはまたAさんが私の前、Goさんが後ろを歩く。
 「ミツバオーレン。」(まだ花はまだのようだ)
 「セリバオーレン。」
セリバオーレン 葉もずいぶん違うが、花もミツバオーレンとは全然ちがう。 こちらの山道に入ってからも、オーレンの花たちは沢山姿を見せてくれた。
 山の北斜面にかかると、岩陰や木陰に、雪や氷の塊も出てくる。
 「前に赤い屋根。」
麦草峠の駐車場に戻ったのは、16時25分だった。
 国道越しに南の方を仰ぐと、青白い空の下に、今登ってきた茶臼山が、クッキリ とその山容を見せている。
 「あの山に登ってきたんですよ。」
駐車場で私を待っていてくれたMaさん夫妻に、Taさんが今日のコースを説明してく れた。

 私たち3人がみんなに別れて、麦草峠を東へ下だり、関越に乗って深谷に帰った のは、19時丁度だった。東京方面に帰った人たちは、中央自動車道で渋滞に遭い、新宿に 着いたのが21時過ぎだったとか‥‥。
 花はまだ少なかったが、天気と眺望に恵まれた、素晴らしい山行だった。東京へ のバスの中は、酒盛りが続いたことだろう‥‥。